食品規格書について、作り方がわからずお困りではありませんか?
卸先から提出を求められることの多い「食品規格書」について、作り方と運用方法を解説いたします。
■食品規格書とは?
食品規格書とは、名称・原材料・栄養成分など食品の情報をまとめた書類で、食品の説明書といえるものです。食品規格書は「仕様書」「カルテ」「原料規格書」などと呼ばれることもあります。
食品規格書は卸先でラベル表示や規格書を作るときに必要となるため、取引の際に求められることが多いです。スムーズに取引をおこなうためにも食品規格書はあらかじめ準備しておくことをおすすめします。
食品規格書をあらかじめ準備しておくメリットは、スムーズな取引のほか、記載ミス防止や情報を一元化できることが挙げられます。食品規格書の内容には、間違えると健康被害につながるアレルゲン情報などが含まれており、正確である必要があります。ですので、食品規格書は余裕をもって作成し、しっかりチェックしておきましょう。
また卸先から食品の不明点について質問がある際、食品規格書があれば基本的な情報は書類を見てもらうだけでよく、社内でも一元化情報として活用することができます。
食品規格書の書式
食品規格書の書式は現在のところ業界内で決まったルールはなく、卸先から指定される場合もありますが、その場合をのぞいて基本的には自由です。Excelなどで一から作成しても問題ありませんが、無料のテンプレートを利用すれば必要な項目をカバーすることができ便利です。
食品業界内で一般的となりつつある「PITS標準フォーム」を中心に、ダウンロードできる無料テンプレートを用意しましたのでご利用ください。
■食品規格書各項目の解説
・基本情報(商品名・メーカー名・内容量・商品画像・JANコード等)/上図⓪
商品名・メーカー名などの基本情報は、食品規格書のトップに記載するのが一般的です。商品名は英数字なども含めた正式名称を記載しましょう。
メーカー名と販売者や輸入者が異なる場合は、販売者や輸入者も記載しお問い合わせ先を明確にしておくと親切です。
また各種管理コードがある場合は、基本情報欄に一緒に記載すると管理しやすいです。
内容量や箱数などの荷姿情報、商品画像などは必須ではありませんが、あると実物と照合する際に役立ちます。特に似たような商品が多いときは、基本情報を細かく記載することで間違い防止につながります。
▼一括表示情報
一括表示ラベルに記載する情報です。先にご説明した使用原材料内訳と重複する場合もあり、省略されることもあります。
食品規格書に記載する各項目について詳しく解説いたします。
・使用原料の内訳・書き方(原材料・添加物・アレルゲン・遺伝子組み換え等)
↓詳しく知りたい方はこちら↓
原材料/上図①
▼原料割合の記載が無い場合
一般的に一括表示の食品表示に記載される「原材料欄」の部分を記載します。
食品表示法に準拠した原材料、添加物、アレルギー表示等を記載します。
▼原料割合の記載が必要な場合
まず、各原材料の使用量の単位を揃え、各配合割合を計算して求めましょう。
例えば、g(グラム)、kg(キログラム)、L(リットル)などの単位をすべての原材料で揃えたうえで、各配合割合(%)を合計が100%になるように記載します。水を使用している場合は、水も含めた配合割合を記載するのが一般的です。
このような各原材料は1次原材料と呼ばれ、次にご説明する加工品を使用した場合の2次原
材料と区別されます。
加工品を使用した食品の場合、2次原材料としてその加工品を構成する原材料名・配合割
合についても食品規格書に記載することがあります。
1次原材料である加工品を100%として、その内訳である2次原材料の各配合割合を先ほど
ご説明した1次原材料と同様に計算して記載します。
以上のように、各原材料名や配合割合を記載するのが親切ではあるのですが、原材料や配
合割合を社外秘にしたいこともありますよね。
その場合は卸先で複合原材料表示の内訳表示や「その他表示」をする際に、どの程度まで省略できるか不明となります。そのため卸先から質問される可能性があり、あらかじめ食品表示例を記載しておくのがおすすめです。
添加物/上図①
食品規格書には原材料だけでなく使用している添加物や、食品の原材料に含まれる添加物についても漏れなく記載しましょう。
特に業務用の商品ラベルでは添加物を省略できますが、食品規格書で添加物情報を伝えることは大事なポイントです。
添加物は物質名だけでなく使用目的も記載し、キャリーオーバーや加工助剤に該当するなどして最終的な表示への省略が可能であれば、その旨を記載します。
使用原材料の内訳欄とは別枠で添加物欄を設定し記載することもあります。
↓キャリーオーバー・添加物について詳しくはこちら↓
アレルゲン情報/上図①-2
使用原材料内訳欄の右側部分に記載することが多いのが、アレルゲン情報です。
アレルゲン情報では、各原材料について義務表示8品目か推奨表示21品目も含めた28品目のうち該当するアレルゲンを記載します。記載の対象範囲についても「アレルゲン8品目対象」などと項目付近に併記しておくと親切です。
↓アレルギー表示について詳しくはこちら↓
遺伝子組み換え情報/上図①
遺伝子組み換え情報も使用原材料内訳欄の右側部分に記載することが多く、卸先でラベルへの遺伝子組み換え表示の参考とされます。ですので、義務表示の対象食品が含まれる場合はあらかじめ記載しておきましょう。
遺伝子を組み換えた原材料を使用しその成分が残る場合、ラベルに「遺伝子組み換え不分別」等の表示が必要となります。一方で、遺伝子組み換えでない原材料を使用した場合のラベル表示は不要で、任意で「遺伝子組み換えでない」等の表示が可能です。
食品規格書には流通の際に分別管理しているか、または分別流通していない場合は不分別などと遺伝子組み換え情報を記載しましょう。
なお遺伝子組み換えルールについては2023年4月1日から任意表示の基準が厳格化されたため、現行ルールに則して記載しましょう。
↓遺伝子組み換え食品表示について詳しくはこちら↓
栄養成分/上図②
栄養成分は、ラベルへの義務表示である熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量については食品規格書にも記載することの多い項目です。炭水化物の内訳やその他ミネラル等は省略することも多いですが、健康食品等としてアピールする場合は記載します。たとえば、「減塩」「カルシウムたっぷり」「鉄分配合」など栄養成分をアピールする場合は、その栄養成分値を記載しましょう。
規格(微生物・重量)/上図③
重量の範囲や微生物の基準など、食品を出荷する際の基準となる規格値を記載します。必須ではなく、記載されないことも多くあります。
その他/強調表示の論拠
パッケージやラベルに特色ある原材料を強調する場合に、その根拠となる資料を求められることがあります。たとえば、北海道産生乳使用、松坂牛使用、オーガニック原料などで、その旨が記載された書類をあらかじめ準備しておくと安心です。
■食品規格書の作り方
それでは具体的に食品規格書を作っていきましょう。作り方について解説します。
1.資料の準備
食品規格書を作る際は、まずレシピや原料情報などの資料を集めるところから始めます。
社内資料であるレシピ・商品画像・規格などを社内で集めるほかに、使用している各原材料の情報をメーカーや問屋など外部の取引先から入手しましょう。取引先によっては提出までに時間がかかることがありますので、余裕をもって集めるのがおすすめです。
集める原材料情報については、先ほどご説明した「使用原材料の内訳」を参考に、食品規格書に記載する情報を集めましょう。たとえば、2次原材料・添加物・アレルゲン・遺伝子組み換え情報などです。
2.準備資料をもとに入力or外注依頼をかける
資料が集まったら準備した情報をもとに原料規格書に入力していきましょう。
先ほどご説明した各項目を参考に、レシピを見ながら原材料や配合率を入力し、各原材料の資料を見ながら原材料情報を入力しましょう。
▼外注依頼はこちら
3.チェック
入力が終わったら入力ミスがないかチェックしますが、元となる資料はあらかじめフォルダなどにまとめておきましょう。
以下のような点をチェックします。
・資料と異なる記載はしていないか
・入力ミスはないか
・表示ルール等を守っているか
・実際に製品に貼り付けるラベルと異なる記載はないか
・最新の情報を記載しているか
このようにチェックの際は細かく見ていきますが、複数の人の目で確認するダブルチェックをおこなうと安心です。
■食品規格書の運用方法
・作成後の更新
食品規格書は作成・提出して終わりではなく、商品の仕様や法律が変わるごとに更新する必要があります。
特に使用している原材料やレシピの配合が変わる場合、すぐに規格書を更新し卸先に報告・提出することが望ましいです。卸先での原材料表示が変わることや、栄養成分値を計算で出している場合はその数値が変わることがあるためです。
また、種類が増えるとその管理も増加・複雑化することがあり、更新や管理のしやすさを視野に入れた運用が求められます。
このような食品規格書の運用方法は2通りあり、社内で運用する方法と外部サービスに依頼する方法です。
・外部サービスに依頼する方法
食品規格書の運用方法2つ目は、外部サービスに運用を依頼する方法です。外部サービスに依頼する場合、費用はかかりますが更新作業の手間や紛失等のリスクが大幅に削減できるのがメリットです。
フードガイドサービスの保持管理運用サービスでは、食品規格書の作成や管理をおこなっております。
サービス内容
・お客様データの保持・管理・運用します
・食品規格書の代行作成いたします
・原材料変更・配合変更などの更新に対応いたします
・表示ルールの改正に自動で新基準対応いたします
↓詳しくは下記バナーへ↓
・社内で運用する方法
社内で運用する場合、書類やPCを使用して管理する方法や、クラウド上で管理する方法があります。商品コードや種類ごとにフォルダ分けするなどして後から探しやすいようにすると、スムーズに更新できなおかつ紛失防止につながるでしょう。
社内運用では食品に関わるルールが変わるごとに社内で対応する必要がありますので、食品表示法などの改正・改訂には常にアンテナを張っておく必要があります。
↓消費者庁URL↓
最後に
食品規格書の作り方と運用方法について解説いたしました。
卸先から提出を求められることの多い食品規格書ですが、無料テンプレートなどを活用することで作成することができます。
便利な外部サービスなども利用して、食品規格書をしっかり管理・運用しましょう。
筆者:内藤知佳
ペットフード安全管理者、管理栄養士、中級食品表示診断士。食品メーカーでの企画開発経験を活かし、現在がペットフードの企画開発を中心に、表示作成の業務を担当しています。
参考:
PITS規格書
食品添加物の成分規格作成の解説 https://www.nihs.go.jp/dfa/dfa_jp/jsfa_explanation.html
消費者庁/遺伝子組み換え食品について
食品表示実践マニュアル
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