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執筆者の写真サービス フードガイド

海外輸出に必要なことは?基準調査と表示作成について

更新日:10月5日


海外輸出に必要なことは?基準調査と表示作成について

はじめに

昨今、日本で製造された食品の海外輸出が進んでいます。理由としては、日本政府が食品輸出を推奨している、国際経済的な利点、外国から見た日本製造の品質面での安全信頼性、世界的な栄養や健康面での意識の向上など様々です。

 とはいえ、「輸出しよう!」と思い立って始められるものではなく、海外輸出を行う際には入念な準備が必要です。なぜなら国ごとに法令や基準が異なるため、製品を輸出対象国に合わせなくてはなりません。この部分をクリアしていなければ「製品はあるが輸出許可が認められなかった」となり、大きな損失につながるおそれがあります。

そして、対象国に適した製品に対して、対象国のルールに沿った食品表示を作成しなくてはなりません。こちらも、ただ翻訳すれば良いというわけではなく表示内容やフォント・字の大きさなど日本とは違ったレギュレーションがあります。

そこで本記事では普段、輸出・国内向けの食品表示についてサービス提供をしている筆者が

①規格基準調査

②食品表示

について解説していきます。

規格基準調査

 まず、製品が輸出可能かどうか、主に食材と食品添加物の調査が必要です。日本では使用可能な食材・添加物であっても他の国では不可となる事があります。また、国によってもその範囲や内容は異なります。例えば

・日本では使用可能だが、対象国では不可

・日本でも対象国でも使用可能だが、使用制限量が異なる

・同じ添加物でも、日本と対象国では可能な用途が異なる

などの状況があります。食品添加物「クチナシ色素」を例に見てみましょう。

クチナシ色素イメージ

日本では植物のクチナシ自体、昔から色付けに使われていました。そこから色素成分だけを抽出したものが「クチナシ色素」で、現在は黄・青・赤の色を得ることができる既存添加物として扱われています。昔から利用されてきた植物で、色の汎用性も高く、日本では多くの食材に使われている添加物です。

その一方、世界ではクチナシ色素の使用に対して様々な制限があります。以下に各国の対応をまとめました。

アメリカ

着色料の使用として認められていない(使用不可)。

EU、中国

ポジティブリストに不掲載であり、認められていない(使用不可)。

韓国

菓子などに使用制限はないが、例えばお茶やコーヒーなどには認められていない(製品により制限あり)

台湾

クチナシ色素(黄)、(青)は使用できるが(赤)は認められていない(種類により制限あり)

このように、添加物ひとつにしても各国で対応が異なるため、対象国に合わせて誤りなく調査が必要です。

調査の際には、各国が提示している基準をクリアしているかどうかを確認していくことになりますが、各国とも食品や衛生に関する法令、規約など事細かに分かれています。それら全てを個人で行うとなると非常に膨大な労力と時間を要することになるので、調査は専門としているところに委託することを推奨いたします。

日本の食品表示では、一部の複合原材料や、キャリーオーバー・加工助剤のような表示上省略可能な原材料・添加物がありますが、輸出の可否を判断するには全ての原材料・添加物の確認が必要です。ですので、輸出したい製品の詳細(種類や使用量等)が省略なく明記された規格書が必要となります。



食品表示

基準調査をクリアし、対象国で流通可能となった製品ですが、そのままでは対象国の店頭に並ぶことはできません。日本でも食品の販売には食品表示が義務づけられていますが、各国でも同様に表示義務があります。例えば食品添加物の表示について、日本・アメリカ・EUでは次のような違いがあります。


▲表示の順番

日本…原材料と明確に区分けして重量順に表示

アメリカ・EU…原材料と添加物まとめて重量順に表示


▲表示方法

日本…原則、物質名で表示

アメリカ…一般名で表示

EU…名称及び E 番号(E+INS番号。EUで認可された食品添加物を示すコードナンバー)で表示


▲アレルゲンの表示について

日本のアレルギー食品について詳細リンクバナー

・日本…小麦、えび、かに、そば、卵、乳、落花生、くるみの8品目が義務

20種の表示推奨品目あり※上記バナーリンクにて詳細説明があります。

米国・EUアレルギーイメージ

・アメリカ…小麦、甲殻類(かに、ロブスター、えび等)、卵、魚類(バス、ヒラメ、タラ等)、落花生、大豆、乳、木の実(アーモンド、くるみ、ペカンナッツ等)、ごまが義務


・EU…穀物(大麦、オーツ麦、小麦、ライ麦又はこれらの交雑株(スペルト小麦やコーラサン小麦等))、甲殻類、卵、魚類、落花生、大豆、乳、木の実(アーモンド、カシューナッ

ツ、クイーンズランドナッツ等)、二酸化硫黄及び亜硫酸塩、軟体動物、ごま、マスタード、セロリ、ルピナスが義務

このように添加物とアレルゲンだけでも表示内容が変わります。


▲栄養成分表示

栄養成分表示についても下記のように表示に違いがあります。


・日本…熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目を表示

に対して

・アメリカ…熱量、脂質、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロール、ナトリウム、炭水化物、食物繊維、糖類、添加糖類、たんぱく質、ビタミンD、カルシウム、鉄、カリウムを表示

・EU…熱量、たんぱく質、脂質、糖質、ナトリウム、飽和脂肪酸、総糖類の量の7項目を表示


となります。ここで注意しなくてはならないのが、日本国内では表示任意である栄養素が、対象国で義務となる場合があるということです。この場合、まず不足している栄養価を出さなくてはならないため、分析などに更に時間を要することになります。


 加えて、アメリカでは1日の摂取量に占める割合(% Daily Value:1日あたり2,000キロカロリーの標準的な食事の場合の、1回当たりの摂取に含まれる各栄養素の割合)も記す必要があり、その算出もしなくてはなりません。


 上記の内容はあくまで一部分であり、実際には各項目で国ごとに表示内容やその基準は異なります。間違った内容や必要事項の記載漏れは、場合によってはリコール(市場からの商品の回収)の対象になりますので要注意です。輸出を希望する国が複数になると、それぞれの国に合わせた情報を準備しなくてはなりません。


▲日本とアメリカの食品表示実例

ここで、日本とアメリカの一般的な表示ラベル例を以下に並べます。


日本

日本食品表示例

アメリカ

アメリカ食品表示例

ご覧の通り、デザインも大きく異なります。

日本の場合、文字の大きさに規定はありますが、フォントや色に指定はありません。また、基本的には文字の大きさも一律です。

一方アメリカの場合、文字だけでも大きさ・フォント・太字による区別があるため、これらを自力で全て誤りなく整えるのは非常に繁雑な作業と言えるでしょう。


せっかくですので、アメリカの食品表示にはどのような内容が表記されているかも見てみましょう。

アメリカの食品表示項目詳細

アメリカでの食品輸出は、FDA【Food and Drug Administration(アメリカ食品医薬品局)】の認証を受ける必要があります。ですので、表示に関してもFDAの規定に則った内容を記さなくてはなりません。

 先程述べたように、アメリカでは1日の推奨摂取量または制限量に対する割合が記載されています。また、脂質や糖質の取りすぎによる肥満の予防に重きを置いているため、脂質は飽和脂肪酸(Saturated Fat)とトランス脂肪酸(Trans Fat)、コレステロール(Cholesterol)の値を、炭水化物は食物繊維(Dietary Fiber)、総糖質(Total Sugars)、添加糖類(Added Sugars)の値を表示しています。ここで添加糖類(Added Sugars)について補足しておくと、添加糖類とはカボチャやフルーツのような自然の甘みでなく、「食品の製造過程で入れた糖」という意味で、砂糖やみりん、蜂蜜などの糖製品を表します。その他の栄養素として、日本では任意にあたるビタミンD、カルシウム、鉄、カリウムの値を表記することとしています。


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海外輸出入においての食品表示サービス

フードガイドサービスでは、規格基準調査、表示ラベル作成ともに承っております。また、

納品は対象国の表示ラベルをAIデータでお渡しいたしますので、フォントなど体裁を整える煩わしさが軽減するのも大きなメリットではないでしょうか。



まとめ

 海外輸出を考えるにあたり、事前に対象国の規格基準に適しているかを調査すること、対象国に合わせた食品表示を作成することは必須です。しかし、その法令や規約は多岐にわたり繁雑なため、不確かな知識で行えば間違った製品・表示となり輸出そのものがストップしうることになります。スムーズな海外輸出のためにも、調査や表示作成を専門としているところのサポートをつけた上で、輸出の準備を行うことをお奨めいたします。





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■執筆者

上級食品表示診断士:塚狭智美

上級食品表示診断士:塚狭智美

■資格

・上級食品表示診断士

​・管理栄養士、栄養士・調理師・幼児食アドバイザー・食生活アドバイザー

■経歴

集団調理に管理栄養士として長年勤務​

その後栄養士養成学校・調理師養成学校にて食品表示、幼児食、栄養学の分野で教鞭をふるい10年以上のキャリアあり。

地方自治体の食品提供イベントの運営、

企業・個人店舗の食品コンサルの経験多数あり



■参考資料

・諸外国との表示制度の比較 消費者庁

・JETRO 日本貿易振興機構 HP



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